ドライブスルーの女王

ドライブスルーは

客と顔を合わせると言うても、

精算時だけで、

注文は他の子が聞いてくれているので、

客ともめるような事はほとんどない。

その点だけは楽かな。

もちろん、皆無というわけではない。

何人か面倒な常連はいてるんやけど、

こいつが一番面倒くさいて奴がおる。

多分四十代かなぁ、

横にめっちゃデカい女性で、

体が車内を埋め尽くしてるので

車のシートなんて全く見えない。

最初の頃は、

「私毎日ここに来てるのに、

たまには無料のクッキーとかないの？」

て冗談めかして言うててんけど、

最近は冗談ですらないというか、

いつも本気で文句言うてる。

 

日本で言うとこの

ポイントカードがあるのやが、

「私、ポイント貯まってるはずやけど！

なんか割引とかないの？」

見てみると、確かに二つクーポンがあった。

「あ、ブレックファーストサンドイッチが

1ドル引きのクーポンと、

菓子パンが無料のやつがありますわ」

「ほな、それ使うわ」

それ使うわ言うたかて、

あんたが買うたんは、フランスパン一本。

ブレックファーストサンドイッチも、

菓子パンも買うてへんがな・・・

「私はこれ、朝ごはんに食べるんやから、

ブレックファーストやないの！」

しょうがないから、言われるままに

クーポンを使おうとしても、

もちろん、コンピューターは受け付けない。

「使えないです」

「誰が使われへん言うてんよ！」

「コンピューターが」

「これは私の朝ごはんよ！」

知らんがな。

「ほな、菓子パンのクーポン使ってよ！」

もちろん、コンピューターは拒否。

「フランスパンは菓子パンやないので・・・」

「パンはパンやないの！」

わしに言うても知るか。

「私はね、ここに毎日来てるのよ！」

お前以外にも毎日来る客はいっぱいおるわ。

てか、お前は二度とここに来（以下省略）

 

「あ、そうそう、コーラちょうだい！

ラージでね！」

お前にはパンも

コーラのラージサイズもいらんやろ、

とも言えず、

レジに打ち込もうとしたら、

「注文してるんやないのよ！」

へ？

「こないだのコーラの味が薄かったから、

それと交換よ！

味見をしなかった私が悪かったけど、

あの日のコーラの味は薄かったのよ！

シロップが足りなかったのね！

だから、その代わりのコーラをちょうだい！」

・・・・・

もう関わりたくないので、

黙ってラージサイズのカップにコーラを入れて渡した。

彼女は即座に味見して

「今日のはマシね」

さよけ、はよ消えてくれ。

「あ、バターもちょうだい」

無言でバターを三つ渡す。

「あんた！私はフランスパン一本買うてんのよ！

バター三つで足りると思ってんの！？」

わしも太ってはいるが、

横綱並みの体格の奴に

どんだけバター渡したら満足するかなんて、

知るわけないやろ。

てか、まじでフランスパン一本と

ラージサイズコーラが

朝ごはんなんか？

無言で、バターを鷲掴みにして（個包装してある）

彼女に渡した。

今のところ、

こいつがドライブスルーで一人勝ち状態。

こいつを超える奴が出ないことを

祈りつつ、明日もパン売ってきます。

　

応援ありがとうございます。