パン屋の閉店時間は午後9時。
しかし、メインの仕事はむしろその後に始まる。
食品を扱う仕事なので、清掃が徹底しているのだ。
今までじぇにたんは「清掃」という仕事をしたことがなかった。
どうして、私はパンを売るだけじゃなくて、
掃除までしなきゃいけないの?
と思うと同時に気づいた。
そうね、私たち安い給料で働いているんだもの。
高い清掃員を雇うより、
私たちに全てをやらせる方が良いに決まってるわよね。
(もっとはよ気付け)
じぇにたんはゆっくりと首を振りながら自嘲した。
(BBAなので激しく首は振れない)
汗だくになりながら全ての仕事を終わらせ、
店のコンピューターを見ると、
スクリーンの右下には11:05の数字が見えた。
(意外と老眼は進んでない←自慢)
ラージサイズのプラスチックカップに、
氷を大量に落とし、水を注ぐ。
そのカップを手に店を後にする。
マスクをはずすと
息が白い。
常夏のフロリダなのに、今年の冬は冷え込んでいる。
でもその寒さも疲れた体には心地いい。
ユニフォームの帽子を脱ぎ、
一つに小さくまとめていた長い髪を解放した。
じぇにたんからJennyになる瞬間だ(誰?)
じぇにたんからの
↓
Jenny (どちらさまですか?)
もし誰かに話しかけられたなら、
もったいぶって髪をかきあげ、
相手にちらりと一瞥だけ与え、
What do you want?
と低い掠れ声で答えるだろう。
(声帯も衰えます)
もうそこには、
○○にようこそ!
ご注文お決まりでしたら、お知らせくださいね!
と愛想笑いを振りまく、じぇにたんはいない。
すっかり冷たくなった車のシートに座り、
エンジンをかけると、ポーンと警告音がなり、
ガソリンが少なくなっていることを知らせた。
Shit・・・
思わずJennyはつぶやいた。
金もないのに、ガソリンもない。
ふっ・・
アラカンおひとりさま、
まさにないない尽くしの私にぴったりじゃないの。
真夜中のガソリンスタンドで、
月を見上げながら、Jennyは笑い出したのだった。
(めっちゃ危ない奴)
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