また客と喧嘩してもた〜後編

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• また客と喧嘩してもた〜前編

「どんだけ待たせるんよ！」

「え？ああ、ごめんなさい。

ちょっとキッチン見てきますね」

彼女の注文はとっくに出来上がっていて、

紙袋に入ってカウンターに置かれていた。

名前は呼ばれたはずやのに、

受け取りに行かなかったのか、

聞こえなかったのか。

あ、あいつイヤホンしとったな。

アホちゃうか。

呼ばれてもそれでは聞こえへんやないか。

「お待たせしてどうもすみません。

こちらになります。

ありがとうございました」

と紙袋を手渡そうとした。

が、

彼女は腕組みのまま、ガン見をやめない。

 

「なんでポケベル渡さんかったんよ！」

うちの店では店内で飲食する客に

料理が出来上がった時に、ポケベルで知らせる。

でもテイクアウトの客には渡さず、

名前を呼ぶことになっている。

（理由は知らないが）

「テイクアウトだからです」

「はぁ？意味わからんし！

え？なんで私にポケベルくれへんかったんよっ！

わざと？それともあんたが怠け者？

ちゃんと仕事しなさいよ！」

私が言い返さんのをええことに、

ガンガン言い募ってくる女。

私がここに書いている

十倍は罵倒された。

店員相手やったら、

絶対負けへん喧嘩やから、

そら好き放題言えるよね。

よそでも同じことやって、

店員に鬱憤ぶつけてんやろなぁ。

そやけど、

私にも同じように出来る思ったら、

大間違いやで。

大阪で生まれた女、なめたらあかんで。

「そんなもん知るか！

テイクアウトの客には渡さんて

店が決めてんや！

私は、店の決まり通り働いてるだけや！

店員やからって、何言うてもええちゅうもんちゃうぞ！

私はあんたから、そんな物言いされる筋合いない！」

と、どやしつけてやった。

私の大きな声に驚いたマネージャーが

奥から飛び出してきた。

 

「マネージャーと話したい？

ああ、話したらええやないか！

これがマネージャーや！」

私は腕組みをして「休め」のポーズで

斜に構えて、彼女をガン見した。

さっきまでの勢いはどこへやら、

彼女は、なんかごちゃごちゃ言いながら、

料理の入った紙袋を抱えて、

半泣きで店を飛び出していった。

え？

あんだけ偉そうにしとったのに、

ちょっと言い返されただけで？

「じぇに、一体何があったの？」

と、マネージャー。

「こんなこんなこと言われたんです、

怖かったぁ・・・」

（吉本新喜劇状態）

「大丈夫？意地悪な人はどこにでもいるわよ。

次からは自分で解決しようとせずに、

私たちを呼んでね」

マネージャーはこけてくれなかったw

私が普段、どんなに意地悪な客でも、

どんなにボロクソ言われても、

耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、

プロに徹して流しているので

よほどのことやと思われたのやろう。

（マスク拒否野郎はやっつけたけどね）

私はほんまに、

喧嘩も嫌やし、怒鳴り声も嫌いやし、

ナイスでスゥイートなじぇにたんとして

生きていきたいのに、

なぜ邪魔をする。

ちょっと言い返されて

半泣きになるくらいやったら、

喧嘩なんか売ってくるな。

　

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